本格小説 上・下

作者は、水村美苗さん
出版は、新潮社です
上下本の大作でずっと読むのをためらっていました
ところが読み始めたら止まらない
いまだにこんな本があるなんて嬉しくなります

お話の設定としてはエミリー・ブロンテの「嵐が丘
あの文学史に燦然と輝く悲恋の物語
それをモチーフに見事に日本に物語を置き換えて昇華してます
本当に途中で読むのを中断するのが惜しくて惜しくてしょうがない作品
友人の別荘に遊びに来ていた青年が自転車である別荘に突っ込んでしまったところから話が始まります
そこで出会ったお手伝いだという女性の語り始めたお話がこの小説
金持ちのお嬢様でも姉たちとは一風変わった少女とその家の借家住まいの少年の出会い
彼女を不憫と思う祖母の愛情
祖母はそうなりことを望んだのかもしれないけれど恋に落ちる二人と周りの反対
それは許されない恋の始まり
彼女をあきらめ、アメリカに渡り苦労を重ねたうえに大金持ちになって少年
彼の行動がさらに不幸を招く
こんなに悲しい恋の物語を今の時代に書かれていて、それを読むとは思いもしませんでした
恋を引き裂いたのは貧富の差や家柄
そんな時代があったなんて今の若い人にはわからないかも
登場する3姉妹のいやらしさも金持ちだから
何をしても許されるのが金持ちというもの
このいやらしさがあるから悲しい恋が引き立てられてます
でも最後にお手伝いと少年が関係を持っていたと三女が語るのは余分かも
うーん、でもいちばん優しいと思っていた三女にこれを語らせたのは作者の意図かも